さよなら、センセイ
「あれ、若月先生、まだ泳いでる」

ヒロが制服に着替えて部室を出ると、先に出ていた男子部員達がプールを見つめていた。

「マジでスゲェきれいだよなぁ。
スタイルもいいしよぉ。白川ババァが定年退職でラッキーだよな」
「だよなー白川ババァの水着姿は、萎えたよなぁ。
若月先生は、うちの女子なんかには絶対にない大人の女っつーか」
「そうそう、色っぽいよなぁ。
オレ、これから真面目に部活通うわ。目の保養だぜ。あわよくば、ポロリも拝みてぇ」

恵は、男子生徒の下卑た視線に気づかず、まるで人魚のように美しいフォームで水をかき分けている。


「ほら、お前ら予備校あるんだろ?さっさと帰れ」

ヒロに背中を押され、部員達は帰路へとつく。
ヒロは部室に鍵をかけ、一歩遅れて歩き出そうとして、ふと、プールに目をやった。


窓から差し込む夕日で水は黄金色に輝いている。その水を掻き分け恵が見事な肢体をみせていた。


たしかに、綺麗だ。
憎らしいほどに。


「あ、俺、若月先生に機械室のお願いするの忘れてた。
行ってくるから、先、帰ってて」

「おー、部長頼む」


ヒロは1人、プールに戻った。


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