さよなら、センセイ

一方、職員室でも、恵を遠巻きに職員らがヒソヒソ話をしていた。
その中心に、山中がいる。


ーー負けない。だって、悪いことは何もしてないもの。人を好きになっただけ。ただ、それが、ヒロだった、それだけ。


恵は、堂々と胸を張り、立ち上がった。そして、恵をチラチラ見てはヒソヒソ話をしている輪に自ら歩み寄る。

「聞きたい事があるなら、ハッキリどうぞ」

あまりの毅然とした態度に、皆、口ごもる。そこへ声を上げたのは、山中だった。

「生徒と同棲するような方が、教鞭をとるなんて」

「同棲なんてしていません。山中先生、有る事無い事、言いふらすのはやめて下さい」

「私は事実しか言ってませんよ、若月先生。
金目当てで丹下の御曹司を誘惑したと言ったのは、あなたですよ」

「まぁっ!」

一同が一気に引いて、恵を咎めるように見る。

「そう言わせたのは、山中先生です。
山中先生が、勝手に邪推したんです。

しつこく私に交際を迫って来られたので、諦めていただくために、その邪推を利用するような発言をしましたが。


私が怪我をして、水泳部の生徒達が心配していて…丹下部長が代表して様子を見に来てくれたんです。
部長には、緊急連絡先として私の住所、電話番号は知らせてありますから。


室内から私の悲鳴が聞こえて、慌てて玄関を開けてみたら鍵がかかってない。それで中に入ってきてくれたんです。

そうしたら、勝手に丹下君を私の彼氏と勘違いして、取り乱したのは山中先生です。

そもそも、お金で誘惑だなんて馬鹿らしいこと、最初におっしゃったのは、山中先生ですよ」



「エェッ!!」

今度は一同、山中を見て引く。山中は青ざめ、慌てて言い訳しようとして焦ってどもる。

恵はそんな山中に歩み寄り、小さな声でトドメを刺した。


「私の頬には、山中先生に叩かれた痕がまだ残っています。
あの後、痛みが引かずに病院にも行ってます。診断書、お見せしましょうか?」

それだけ言って、恵は今一度、席に着く。もう、恵を中傷する者はいなかった…


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