お宿の看板娘でしたが、王妃様の毒見係はじめます。

「ケネス様、本日はご招待いただきありがとうございます」

「やあ、オードリー殿。先日はすっかり世話になったからね。こちらが娘さんだね。今日は料理を楽しんでもらうための夜会だから、たくさん食べておくれ」

ケネスの手に頭を撫でられ、クリスは上目遣いで見つめる。

「クリス、ご挨拶なさい。教えた通りに」

オードリーが促すと、彼女はぴょこんと体を前に出し、ドレスの裾をつまんで礼をした。

「クリス・オルコットです。お招きありがとうございます」

かわいらしくもきちんとした仕草に、ロザリーはすっかり見入ってしまう。

(可愛い! クリスさんお人形さんみたい!)

「かわいらしいお嬢さんですね。……ところで、ウィストン伯爵はどうして? 失礼だが本日は招待は……」

「実は私とオードリー殿は婚約中でしてね。オルコット子爵にも頼まれまして、今日は彼女の同伴者として参りました」

「そうでしたか。それはおめでとうございます。当家自慢の料理人の味をじっくり堪能してください。ああ、ご紹介します。こちらはうちでお預かりしている令嬢で、ロザリンド・ルイス男爵令嬢です」

そこから、ロザリーはウィストン伯爵に型通りの挨拶をする。
さりげなく近づきながら、彼の体臭を嗅ぎ取り記憶する。
役に立つか分からないが、自分にできることはこれしかないのだ。
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