お宿の看板娘でしたが、王妃様の毒見係はじめます。

「……これ、本当にオードリーさんの筆跡ですか?」

ロザリーの問いかけに、レイモンドは眉根を寄せた。予想していなかった問いかけらしい。

「筆跡って言われてもな。……あ、以前の手紙ならある」

レイモンドは急いで地下にある自室に向かい、ひと月前にもらったオードリーの手紙を持って戻ってきた。

「これが前の手紙だけど」

この時は、クリスのロザリーあての手紙も同封されていたし、便箋に付いた香りも間違いなくオードリーのものだった。封筒の封蝋のあたりにふわりと立ち上るクリスの香りに、ロザリーは頬をほころばせる。
筆跡を見比べてみると、似せてはあるもののやはり違いがある。

「癖が違いますよね。オードリーさんだったら、ここの跳ねるところの角度がよくこうなっていますけど」

「本当だ」

オードリーが出したのではないのに、オードリーの名前で投函されている。
その目的が、レイモンドにオードリーのことをあきらめさせるためなのだとしたら、これを出した犯人はおのずと決まってくる。
彼女の再婚を阻止したいオルコット夫妻だ。
それを伝えると、レイモンドは眉根を寄せた。

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