お宿の看板娘でしたが、王妃様の毒見係はじめます。

「あと一週間もあれば行けるな」

レイモンドのつぶやきに、ロザリーは不安に駆られたまま思わず手を上げた。

「あのっ」

「なんだ、ロザリー」

「私も連れて行ってもらえませんか? 王都へ」

「え?」

一瞬、厨房の動きが止まる。レイモンドは目が点になって絶句しているし、ランディも慌てたようにロザリーのもとへ来て諭すように言う。

「ロザリー。レイモンドはオードリーを迎えに行くんだから……」

女性を迎えに行くのに女性連れで行けるはずがない。
オードリーの義父母に知れたら、何しに来たのだと言われてしまう。

それはロザリーもわかってはいるが、ザックからのあまりの連絡のなさに、不安でじっとしてもいられなかった。

「お願いです。ザック様から連絡がこないんです。私、心配で……」

声に出したことでピンと張っていた気持ちの糸が緩んだ。途端に瞳に涙がにじみ、ロザリーは必死にこらえながらも自分の気持ちを伝える。

「ごめんなさい。困ったことを頼んでいるのはわかってます。……でもお願いします。ザック様に会いたいんです」

「ロザリー、泣かないのよ」

すぐにチェルシーが駆け寄ってきて、ロザリーを抱きしめる。

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