お宿の看板娘でしたが、王妃様の毒見係はじめます。
荷物をひと通り確認したケイティは、メイドに言って、クロエの子供の頃の服を持ってこさせた。
年は一歳しか違わないが、身長はクロエのほうが十五センチ近く高い。ケイティいわく、クロエが十二歳ごろに着ていたドレスが、サイズ的にはロザリーにはピッタリらしい。

「こんなに素敵なドレス、いいんですか?」

「いいもなにもお下がりですもの。当座をしのぐためだけよ。デザインが子供っぽいから、あなたにはいずれもっと別のドレスを仕立てるわ」

「でも、そんなにご迷惑をおかけするわけには……」

たじろいでいると、ていっと手首辺りをたたかれた。仕草も笑顔もケネスそっくりだ。

「遠慮はいりません。これは伯爵家のためでもあるのよ。あなたを社交界デビューさせ夜会に連れ出すことで、ケネスもクロエも一緒に行かざるを得なくなるでしょう。結婚願望の薄いあの子供たちに、私はなんとかして良縁を見つけたいの。そのために使えるものは何でも使うわ!」

「は、はあ」

「特にケネスよ。アイザック様と仲がいいのは結構だけど、そろそろ身を固めて堅実に仕事をしてもらわないと困るわ。旦那様の立場だって考えてもらわないと。頑張りましょうね! ロザリーさん」

「は、はい」

己の目的に忠実なのは、イートン伯爵家に共通する性質なのかもしれない。
ロザリーがそう思ったのは誰にも内緒だ。
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