お宿の看板娘でしたが、王妃様の毒見係はじめます。
「レイモンドさんは大丈夫ですか?」
「ああ。とりあえずはここで働かせてもらって、オードリーに会える機会をうかがってみるよ。オードリーだって、全く外に出ないってことはないだろうからな。クリスがいて、何日も部屋にこもりきりでいられるわけがない」
たしかに、クリスは好奇心旺盛な性格で、切り株亭にいたときも店の中も外も興味津々だった。
「そうですね。クリスさんがきっとオードリーさんを連れ出してくれます」
「だろ?」
かわいい年下の友達を思いだして、ようやく心から笑うことができた。
「俺は俺で、オードリーを連れ帰るために頑張るから、ロザリーも頑張れ」
「はい。ありがとうございます」
「なんてったって、失せもの捜しの令嬢だからな。ザック様だってすぐ見つかるさ」
レイモンドの軽口のおかげで、気が晴れてくる。
「頑張ります」
できることをやるのだ。王都くんだりまでやって来たのは、ザックの無事を確かめるためだ。
もし本当にケネスが言うようにザックが苦境に立たされているなら、出来る限りの力で頑張りたい。