お宿の看板娘でしたが、王妃様の毒見係はじめます。
*
荘厳なる石造りの城。昼間は議会が催され、多くの人間の出入りがあるが、夜は静かなものだ。
重臣たちとの個別の打ち合わせは、大体この時間に行われる。
第二王子であるザックことアイザック王子殿下は、執務室でバーナード侯爵とイートン伯爵の三人で顔を突き合わせている。
「夜会の招待状の手配が整いました」
「そうですか。ウィストン伯爵は来そうですか?」
「大丈夫でしょう。王家が主催する定例の夜会は、令嬢の社交デビューの場であるとともに情報交換の場でもある。ウィストン伯爵は、王都にいる間は必ず出席しています」
熱弁するのは、丸顔で血色のいいバーナード侯爵だ。
押され気味のザックは助けを求めてちらりとイートン伯爵を見るが、苦笑するだけで特に彼を抑える気はなさそうだ。
ここにケネスがいてくれれば、うまく話題転換をしてくれるのに……と思ってしまい、我に返って首を振る。
「となると王子にもパートナーが必要ですな」
楽しそうにバーナード侯爵が身を乗り出す。とはいえ、侯爵家の娘たちはザックよりも年齢が十ほど上ですでに嫁に出ているので、対象ではない。バーナード侯爵はイートン伯爵を振り返り、「君のところのクロエ嬢とはどうなっているんだ」と茶化す。
荘厳なる石造りの城。昼間は議会が催され、多くの人間の出入りがあるが、夜は静かなものだ。
重臣たちとの個別の打ち合わせは、大体この時間に行われる。
第二王子であるザックことアイザック王子殿下は、執務室でバーナード侯爵とイートン伯爵の三人で顔を突き合わせている。
「夜会の招待状の手配が整いました」
「そうですか。ウィストン伯爵は来そうですか?」
「大丈夫でしょう。王家が主催する定例の夜会は、令嬢の社交デビューの場であるとともに情報交換の場でもある。ウィストン伯爵は、王都にいる間は必ず出席しています」
熱弁するのは、丸顔で血色のいいバーナード侯爵だ。
押され気味のザックは助けを求めてちらりとイートン伯爵を見るが、苦笑するだけで特に彼を抑える気はなさそうだ。
ここにケネスがいてくれれば、うまく話題転換をしてくれるのに……と思ってしまい、我に返って首を振る。
「となると王子にもパートナーが必要ですな」
楽しそうにバーナード侯爵が身を乗り出す。とはいえ、侯爵家の娘たちはザックよりも年齢が十ほど上ですでに嫁に出ているので、対象ではない。バーナード侯爵はイートン伯爵を振り返り、「君のところのクロエ嬢とはどうなっているんだ」と茶化す。