偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~
「相良部長。高坂を小一時間ほど借りたいんだが」
「はぁ、高坂ですか? まあ本人が良ければ、うちは全然構いませんが」
そう勝手なことを言う相良部長に、大きく首を振る。
部長は構わなくても、私は構うんです! なんでそんな大事なことを、勝手に了承しちゃうんですかっ!!
「高坂に、何か御用でも?」
御用も何も、ホントに御用。彼に捕まって、事情聴取されるんです!
「いや、大したことじゃない。新メニューのことで、少し聞きたいことがあってな」
新メニュー!? よくもそんな口から出任せなことが言えたものだ。本当に新メニューのことで聞きたいことがあるのなら、今ここで聞けばいいでしょ!
と正面切って言えない、自分が嘆かわしい。
こうなったらと相良部長に、身振り手振りでNGだと伝えるも全く通じず。「何を踊ってるんだ。さっさと支度しなさい」と言われる始末。頼みの綱の市ノ瀬くんに目配せしても、社長相手じゃ無理と言わんばかりに苦笑されてしまった。
高坂朱里、絶体絶命。どうにかしてこの状況を打破できないものかと考えてみたが、もう打つ手はなさそうだ。
「高坂、行くぞ」
真史さんは私になんの伺いもせず、さも当たり前のように歩き出す。
「……はい」
仕方なく立ち上がると、何も持たずに真史さんの後をついていく。