夜をこえて朝を想う
歳上の男に可愛がられる所以だろう。

そして、まんまとそれに乗せる。

可愛い奴だと思わせてから。

「なるべく、女性と会わせないようにしてもらえませんか?勿論…仕事に差し障らない程度で結構です。御社は、女性社員が多いので。」

…あー…確かにな。

ついでに、馬鹿な女性社員がね。

もうとっくにチェックされてますけどね、君。

「大変だね、モテる男も。」

ちょっと軽薄そうなんだよな。彼。

しかも、女性社員と目が合ったらにっこりと笑う。

それが…ちょっと…ナンパっぽいというか…OKのサインぽいというか…

無自覚だろうしな。

そんな感じなもんで…

言われないと気づかないだろう。

彼の心理面にトラブルがあることは。

「清水部長も、モテるでしょ。ブイブイいってんですか?あ、結婚されてましたっけ?」

「してない。」

俺も結構、若いんだよ。

ま、彼から見たらオッサンかな。

「ブイブイ?結婚?」

「どっちもだよ!」

ブイブイて、俺に合わせて、死語を?

全く…

まぁ、いい人材だ。

うちに欲しいくらいの。

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それから…3年近くの年月が過ぎたが

彼から“治った”の報告はなかった。

全く浮いた話もない。

…随分、重症だったんだな。

それに…女性に対しては、軽薄な外見に反して…繊細で真面目な男だった。

歳を重ねる毎に、色気も増し、男としてはどんどん魅力的になる。

回りが放っておくわけもなく…

彼がうちの社に来る時には飽きもせず、社内は色めき立つ。

指輪、正解だな。

俺も何か聞かれても、否定せずにいた。

そんな彼に、ようやく動きがあった。

俺も、彼女が居なかった訳ではない。

会社関係なく、知り合った女性と何人か付き合った。

だけど…忙しさにかまけていたら

あっという間に終わって行った。

そして、いつか面倒くさくなって

最近になって、仕事に尽力し、寄ってくる女性社員をかわし、社内であちこちくっつけて

気づけば、30代に入ろうとしていた。

男なら、まだまだで…だけど、ふと

そろそろ自分の為に…

恋人というか…癒しが欲しいと思った頃だった。

単純に、俺だけを見てくれる存在が。

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