夜をこえて朝を想う
吉良君と、中条さんが帰った後…

信じられない事を耳にした。

一人の女子社員が吉良君に迫ったと。

会社(ここ)で。業務中に。

取引先相手に…。正気か。

例えば、プライベートなら、譲れた。

会社(ここ)がどういう場所なのか、分かって居ないのだろうか。

ここの社員である限り、会社の看板を背負っているのだ。

会社の問題になるということを。

SNSの時代。誰がどこで情報を流すか分からない。

自覚すべきだ。もっと…

セクハラで訴えられるかもしれない。

まぁ、彼はしないだろうが。

男女逆なら、大問題だったかもしれない。

奥さん(いないけど)に、バレたらそこから晒される事だって…

馬鹿だ。

本人に確認するのに、呼び出した。

そして、自覚させる為に説明した。

「そんな、大袈裟なぁ。だって、格好いいんだもん。1回くらいって…断る男の方が珍しくないですかぁ?」

どっからくるんだ、その、実力と反比例した自信。

張り倒したい。

どうなってんだ、頭ん中。

虫でも巣くってのか。

「訴えられるかもしれない。」

そう言うと

「えぇ、助けて下さい。そうなったら、部長~。」

もう、埋めてやりてぇ。

どうなってんだ、人事。

「クビになるよ。」

「いいですよ、別に。そんなに楽しくないし、どっちみちいい人掴まえたら、そうするつもりです。部長でもいいんですけど、どうですかぁ?」

ああ、いいね。

ここまで来たら、辞めて貰おう。

上に報告だな。

話す時間が無駄だ。

吉良君に悪いことした。

そう言えば、あの日…商談ルームに戻って来なかった。

俺に挨拶もせずに帰った事なんて…今までの彼から考えても一度もない。

…キツかったんだろう。

あー…腹立つ。

でも、俺の責任だ。

認識が甘かった。

徹底すべきだな。社員教育…公私混同。

まぁ、言ってもオフィスラブが横行しているわけだ。

恋愛は自由だし、プライベートも自由だ。

ただ、やり方を考えなければならない。

社会人として。

今となっては…

吉良君だけじゃない。

中条さんも…危険といえば危険だ。

なんせ、あの容姿だ。

さて、どうするべきか。

< 7 / 146 >

この作品をシェア

pagetop