破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします
ファーレンとモルンロートの国境は渓谷に沿って築かれている。

祈りの洞窟はその渓谷に入って間もなくの断崖にぽっかりと口を開けてアーシェリアスたちを待ち構えていた。

手綱を尖った岩にくくり付け、洞窟に入る準備を始めるアーシェリアスとノアを横目に、ザックは宿場町を出てからずっと追ってきている気配の方へとそっと視線を移す。

しかし、相手は相当用心深いのか、または気取るのがうまいのか、その姿を確認できない。

見えるのは、茶や橙色が層になって高くそびえる岩壁と、発育不良の草木ばかりだ。


(……まぁ、殺気も感じないし大丈夫だろう)


どちらかというと、様子を伺っているという表現が正しい気配なため、今はまだ放置しておくことにする。

まして、ここからは洞窟。

相当な理由がない限り、中までついてこないだろうと踏んだのだ。


「これでOKね!」


爆弾を詰めた鞄を肩にかけ、弁当箱の入った籠を手にしたアーシェリアスがノアとザックの様子を確認する。

ふたりの準備も整っており、シーゾーもやる気満々といった様子で洞窟の入り口へと「モフー!」と声を出しながら飛んでいった。

その後に続くように、アーシェリアスたちもひんやりと湿った洞窟へと足を踏み入れる。

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