皇帝の胃袋を掴んだら、寵妃に指名されました~後宮薬膳料理伝~

必死に訴えると、彼は呆然としている。


「あぁ、そっちの襲うね。それはまったく心配してない」


それじゃあ襲うって? 


「夜伽に来たのかと」


それを聞き目が真ん丸になる。


「ち、ちち違います」
「そうみたいだね、残念」


『残念』ってどういうことだろう。予測もしていなかったことを言いだされたせいで頭が真っ白になり思考がまとまらない。


「食事を作らなくちゃ」


立ち上がると彼に腕を引きとめられた。


「ひと晩ついていてくれたんだね。久々に快眠できた気がするよ」


あんなに唸っていたのに?


「ずっと眠れなかったんですか?」

「うん。漆黒の得体のしれないものが俺を殺しにくるんだ。逃げようと必死に走っているのに決まって蹌踉(よろ)めいてしまって。馬乗りになられて剣を振り下ろされそうになるところで目が覚める」


これはやはり心の問題だろう。
毒を盛られるという凄惨な出来事の傷が癒えていないのだ。
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