皇帝の胃袋を掴んだら、寵妃に指名されました~後宮薬膳料理伝~
あっ……。玄峰さんが帰って来たときの馬蹄の音にも気づいたんだった。耳が利くのかも。
いや、命を狙われるような場所に身を置いていたので、常に気を張る癖がついているのだろう。
それはそれで不憫に思う。
「失礼します」
口から心臓が飛び出しそうなのに気づきながら、ゆっくりと扉を開けた。
劉伶さまは私に近づいてきて、「いらっしゃい」と手を差しだす。
「えっ?」
「お手をどうぞ」
「い、いえっ」
こんな美男子にそんな丁寧な扱いをされたら、卒倒しそうだ。
「大丈夫。手は許されてるから」
「でも」
まともに顔を見ることができずにうつむくと、彼のほうが私の手を握った。
「玄峰の手では駄目だ。やはりこの手でないと」
そうか。安眠を得るための道具なんだわ。
私ったらひとりで舞い上がったりして。
「ゆり根の効果があるといいのですが」
「そうだね」
即効性があるわけではない。でも、効いてほしい。