皇帝の胃袋を掴んだら、寵妃に指名されました~後宮薬膳料理伝~
「麗華、また必ず会おう。お前の作った料理はしばらくお預けだ。再会したときには、またあの麻婆豆腐を作ってくれ」
「はい。花椒の効いた、うーんと辛いのを作ります」
「あはは。食べられる程度にしてくれよ」
おどけた調子で答えるのに、私の背中に回った手には力がこもる。
私は彼の腕の中でうなずきながら、必死に上衣をつかんでいた。
この手を離したら、いよいよお別れだ。
それからどれくらいそうしていただろう。牽衣頓足(けんいとんそく)というのはこういうことを言うのだと打ちひしがれていると、扉の向こうから博文さんの声がする。
「劉伶さま、そろそろ」
「わかった」
劉伶さまは返事をしたあと、もう一度私を強く抱きしめてから離れた。
「麗華。必ず元気でいてくれ」
「劉伶さまも」
「あぁ」
彼はこらえきれず流れた私の涙を大きな手でそっと拭ってから部屋を出ていった。