お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
「澪!!」

エレベーターの外から私の名を呼ぶ声がした。

振り向けば柊一朗さんが、私の元へ駆け寄ってくるところだった。

さっき壇上に立っていたときとは全然違う、余裕のない眼差しで。

「柊一朗さん!」

手を伸ばそうとしたところで、私の体に回った雉名さんの手に力が込められ、あっさりと全身を絡めとられてしまった。

無情にも柊一朗さんの目の前で扉は閉まり、エレベーターは足元をすくうような感覚とともに降下を始めた。

「――っ!」

雉名さんに抱きしめられたまま、愕然と閉じた扉を見つめるのだった。

< 226 / 294 >

この作品をシェア

pagetop