お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
「やっぱり私、戻ります」

雉名さんの腕を振り切って、エレベーターの外に向かって飛び出そうとした。

けれど、その手を、雉名さんは再び掴んで。

「俺が――」

振り向くと、彼は愚直な目で私をじっと見つめていた。

「――本気で、行かないでくれと言っても……?」

切実な表情に思わず足が止まる。ドクン、と鼓動が震え躊躇っているうちに、吸い込まれるように彼の腕の中に収められてしまった。

「俺でいいだろ……?」

頭上から注がれる、彼らしくない掠れた声。

慰めるような抱擁と温もり。拒み切れなくなりそうで、胸の奥がかき乱された。

「雉名さん……」

それでも、どんなに優しくされようと、自分の意思を曲げることなんてできない。私が愛しているのは、柊一朗さんだから。

「私……」

彼の胸を押し返そうとした、そのとき。
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