お見合い求婚～次期社長の抑えきれない独占愛～

振り向いてはまずい、気づかなかった振りで歩みを進めるけれど、即座に追いかけてきたその男に手首を掴まれ、私は「きゃっ」と悲鳴をあげた。

振り向けば男は、恐ろしい形相で私を見下ろしていた。

身の危険を感じ、膝がガクガクと震え始める。

「やっぱり、お前だったんだな。会場で見た瞬間、すぐにわかった」

目の前にある男の顔が、みるみるうちに怒りに歪んで赤く染まった。

私の腕をへし折りそうな勢いで掴み、ぐいっと乱暴に引っ張り上げる。

「どうしてお前が専務の隣にいたんだ！　どうやってとり入った！」

「きゃあ！」

ひと気のない通路に連れ込まれ、首筋を強く掴まれる。ドン、と壁に押しつけられて、本気で命の危険を感じた。

男の大きな手の中に私の首はすっぽりと収められ、そのまま力を込めれば喉などあっさりと潰れてしまいそうだ。

「貴様には、私の顔に泥をぬった罪を償ってもらう。二度と専務の隣など、歩かせん！」

そう吐き捨てると、私の腕を乱暴に掴んだまま細い通路をつき進み、従業員用の簡素なエレベーターに私を押し込んだ。