お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
「放して――」

「うるさい! 黙れ!」

一瞬で迫力に気圧されて、悲鳴さえも出せなくなった。口をパクパクと動かしながら、恐怖で声を失くした喉を押さえる。

男は十七階のボタンを押すと、すかさず扉を閉めた。

その階になにがあるのだろう。私はどこへ連れて行かれるのか。

あまりの恐怖に身動きをとることも出来ずに、エレベーターがそこへ辿り着くまでじっと震えて待つことしか出来ない。

チーンという軽快な音を響かせて扉が開くと、そこには長い廊下があり、客室の扉が延々と並んでいた。

部屋に連れ込まれてはまずい――再び身の危険を感じ逃げ出そうと暴れるけれど、男の力にはまったく敵わない。

「安心しろ。手荒な真似はしない。お前に然るべき制裁を下すまでだ」

反論してやりたいのに、こんなときに声が出なくなってしまうだなんて。悔しくて唇をかみしめる。

男は客室のひとつにカードキーを滑らせた。開いた扉に私の体を放り込んで、すかさずドアを締める。

チャッ、と短いロック音が響き、血の気が引く。これはもしかして……監禁?
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