お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
チェアに腰かけて、行き交う人の波をぼんやりと眺め、ときたまエレベーターが開いたのを目にしては、穂積さんが乗っていないかな? なんて探してみる。

少し冷房が効きすぎだ。腕をさすっていると、ほどなくして穂積さんが小走りで駆け寄ってきた。

慌てて立ち上がり、バッグの中から書類の入った封筒をとり出す。

「わざわざこんなところまで持って来てもらって、ごめん」

穂積さんは、わずかに乱れた前髪をかき上げて笑う。

息を切らす姿すらセクシーで様になっており、なんだか妙に緊張してしまった。

「いえ、大丈夫です。書類をどうぞ」

封筒を手渡すと、彼は中を確認して安堵の表情を浮かべ、「ありがとう。すごく助かった」と清々しい顔で笑ってくれた。

「それにしても忘れ物だなんて。よっぽど焦っていたんですか?」

そう冗談交じりにからかうと、彼は甘えるように首を傾げて。

「ごめんね。立花さんに怒られたくなっちゃったんだ」

え? と私が目を瞬くと、彼は悪戯っぽい顔をして、スーツの内ポケットから一枚のカードを取り出した。

コーヒーショップ専用のプリペイドカード――それを私に手渡して、耳元に唇を寄せてそっとささやく。
< 26 / 294 >

この作品をシェア

pagetop