お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
「ちょっと意外。上村さんって、穂積さんみたいな綺麗めな顔の人が好きなんだと思ってた」

「全然違うタイプですけど、お二方ともイケメンではありますよね」

なるほど、と私は唸る。見た目や社交性は見事に両極端なタイプではあるけれど、確かにふたりともモテそうだ。

「雉名さんって、怖い人だと思ってたから話しかけられなかったんですが、今度話してみようかな」

上村さんは、どうやら穂積さんに代わる新たなトキメキを見つけたようで、瞳を輝かせた。

「穂積さんは最高に格好よかったですけど、いない人のことをいつまでも考えていても、しょうがないですしね?」

上村さんのその言葉は、まるで自分に向けられたような気がしてドキリとする。

撫でられた頭を押さえ――というか、正確には叩かれたのだけれど――遠い記憶に思いを寄せた。

感傷に浸っていても仕方がない。仕事に集中しよう……。

ぶんぶんと首を横に振って雑念を払うと、私は段ボールに向かい仕事を再開した。
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