迷惑なんて思ってないよ

ここにいたんだ

新しい朝が来て高校に行くと、柏崎さんはいなかった。去り際にあのおばあさんが言った、苦労人という言葉が気になったけど本人がいないんじゃ確かめようがない。俺は一人になりたくて、付いてくる生徒たちから逃れるように屋上へ向かった。
この時期の屋上はガラス張りの天井が思った以上に暑いけれど、一ヶ所だけとても涼しい場所がある。用具箱が置いてある場所だ。校内へ続く階段が小屋のような物に覆われているため、その隣にある用具箱の付近は一日中日陰のまま。他の場所とは違ってこの時期はどの教室よりも涼しい、たまに肌寒いほど温度が違った。
ほとんどの生徒はこの場所を知らないから暑いだけの屋上へは近寄らない。俺を捜しに来ても暑いからいるわけがないとすぐ引き返してくれる。最高の逃げ場所だった。絶対的な邪魔されない居場所、小さい頃によく作った秘密基地のような感覚だ。
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