迷惑なんて思ってないよ
勝ち目のない戦いにどう挑めって言うんだよ。
苛立ちを荷物にぶつけながら荷造りをしていると呼び鈴が鳴った。慶太郎が柏崎さんたちが来たと下から叫んでいるけれど、正直行く気にはなれなかった。どうせ唯野さんたちがいるのなら俺はただの友達としか見られない。守る事だって大人である唯野さんたちの方が多い。きっと会話も少なくなるだろう。
浮かない気持ちのまま、荷物を持って階段を降りていると急に体に力が入らなくなった。くらっと来たのも一瞬で、俺は意識を失った。意識を失う直前に慶太郎の声が聞こえた気がしたけれど、本当に慶太郎の声だったのかは分からない。
ただ、意識が戻った時には柏崎さんと晴人くんの声が聞こえた。でも、内容が内容なだけあって目を開く事が出来なかった。

「姉ちゃん、伊野先輩の事を諦めるって本当なの?」
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