天然お嬢様の恋はどこまでもマイペース
「ただいま」
「こんにちは」
私と泰介の声が重なり、

「はーい」
家の奥から、女性の声。

あれ?
お母様にしては随分若い声。

「はい。どちら様で」
奥から出てきた女性の言葉が、止まった。

え、ええ?
何で?

「どうしてお前が・・・」
泰介が驚いている。


・・・。
3人とも動けないまま、時間が過ぎる。

「とにかくどうぞ」
女性がスリッパを並べ、

「なんでお前が言うんだよ」
泰介の呟き。

「お邪魔します」
私も上がらせてもらった。


「山田のおばさんに聞いたの?」
昔ながらの家の長い廊下を歩きながら、泰介に聞いている。

「ああ。おまえはどうしているんだ?」
「うん。たまたま」

何だろうこの雰囲気。
私の入る隙はない。
< 103 / 186 >

この作品をシェア

pagetop