天然お嬢様の恋はどこまでもマイペース
「爽子さん、ごめんなさいね」
泰介がお隣にご挨拶に行き、夏輝さんが台所に立ったとき、お母様が謝ってくださった。

「きっと、気分を悪くさせたわよね。実は今日夏輝ちゃんが来るのは分かっていたから、お隣さんに泰介には知らせないでって言ったのよ」
「そうだったんですか」

「夏輝ちゃんは高校時代にご両親を事故で亡くしてね、今は天涯孤独なの」
「え?」
「だからかしら、泰介と付き合っている時から何度も家に遊びに来てくれて、私を慕ってくれてね。仕事を始めてからも、帰国のたびに顔を出してくれていたの」
「そうなんですか」
天涯孤独なんて、夏輝さんお気の毒。

「夏輝ちゃんを怒らないでね」
「はい」
はじめから、そんな気持ちはない。
ただ、突然のことで気持ちの整理がつかないだけ。
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