ヴァンパイア†KISS
ウルフガングはこのガイアにおいて、孤独だった。

もともとこのガイアを統率していたのは、ウルフガングと兄であるユーゴの二人だった。

ヴァンパイアたちはこぞって、二人を主と仰いでいた。

だが、ユーゴの特殊能力はその二人の仲をも引き裂いた。

ユーゴの能力。

それは、ヴァンパイアの女達をその強力なヴァンパイア・キスによって虜にすること。

人間を虜にすることはできても、ヴァンパイアをそのキスによって虜にすることができるヴァンパイアはこのガイアにおいて、ユーゴ以外にない。

ヴァンパイアにとって血を分け合う恋人は不可欠である。

ウルフガングにも数十年前、クローディアという恋人がいた。

だが、独裁を望むユーゴにとってクローディアは格好のえさとなった。

ユーゴがその魅惑的な唇でクローディアにくちづけすると、たちまちユーゴの虜となった。

ウルフガングはそれ以来、恋人をつくらなくなった。

作れるはずもなかったのだ。

ユーゴに邪魔をされては……。

そのことは、このガイアの統率者としての失墜を決定的なものとした。

ヴァンパイアにとって、甘い血とキスの快感は、ヴァンパイアのエネルギーの根幹を成すものである。

ヴァンパイアはそのエネルギーの全てを甘い血の快感と性的な快感から得る。

それが、本来のヴァンパイアの姿だったのだ。




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