ヴァンパイア†KISS
「ヴァンパイア・キス」

そのダンスカップル100組は優に踊れるという巨大ダンスホールは、このガイアにおいて最も優雅で煌びやかなヴァンパイアたちの娯楽の場だった。

彼らの活動は主に人間が寝静まった夜。

昼間はパワーが落ち着き睡眠に入る彼らも、夜は月の引力に導かれるようにその活動を開始する。

彼らの活動とはすなわち、恋人とのエクスタシーでエネルギーを得ること、血を求め合い分け合うこと、そして、ダンスを踊ることだった。

彼らは昼間はほとんど地上に出ることはなかった。

彼らの用心深い習性により、夜の外出以外はほぼ禁止されていた。

ただ、ウルフガングだけが昼の外出を許されていた。

ヴァンパイアにとって脅威の人間の動きや情報を逐一収集する必要があるためである。

ウルフガングはそれによって、エマに出会うことができたと言えるだろう。

それと同時に彼は、ダンスの名手でもあった。

このヴァンパイアの世界において、ダンスの上級者は誰よりも尊敬の念を受ける存在となる。

そして兄のユーゴもそのダンスの才能により尊敬を集める存在であり、二人のその才能がこのガイアの主という存在へと押し上げていた。



「いいか、カルロ。このヴァンパイアの世界で強くなりたいなら、誰よりもダンスがうまくなるんだ。お前はその姿も、心も、美しい。可能性は充分にある」

ウルフガングは身を屈めながらカルロを覗き込むと、カルロの誰よりも澄んだ青の瞳に強く光るものをとらえた。

「ウルフ…。僕はダンスがうまくなりたいんじゃなくて、ヴァンパイアになりたいんだ!エマを護るために…。僕の血を吸ってもいい。僕をヴァンパイアにして!」

ウルフガングは言い聞かせるようにカルロの両の肩に手を置くと、

「お前をヴァンパイアにはしない。人間として、強くなってくれ。……エマのために」

そう言って、けして笑わないカルロの瞳に、願いを込めるように、笑った。



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