ヴァンパイア†KISS



「………エマ――――!!!」




激しいバイオレットの光が城一面を駆け巡るように。

全てが、真っ白になった。

何が起きたのか、考えたくない。

でも、でも……この弱まっていくオーラは………!!

目を開いた瞬間。

エマの大きく美しい瞳を見た。

大きな瞳はさらに大きく見開かれていく。

その瞳に涙が溜まって流れていく一粒まで、わたしは鮮明に見ていた。

風に揺れるウルフの銀髪のサラサラという音までが聞こえる。

そして、エマの愛しい人の名を呼ぶ美しい声も……。

「……ウルフ―――――!!!」



エマの目の前で、ウルフは確かに立っていた。

あの一瞬で、彼は立たない足を無理やり立たせ、駆け抜けた。

それは、奇跡にしか見えなかった。

いや、奇跡をも起こすウルフの愛。

ウルフはあの剣が危険だと判断したからこそ、シエルを止めた。

そして、自らがその危険に飛び込んだ。

………愛しい人を護るために。




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