危険な愛に侵されて。
このままでは体の力が抜け、ナイフの存在に気づかれてしまうかもしれない。
仕方がないけれど強行突破だ。
左手で彼のシャツを掴み、受け入れているフリをして。
空いている右手は自分の太ももに触れ、ナイフをしっかりと掴む。
どうか地獄に堕ちますように───
そう願いを込めて勢いよく彼の喉を狙おうと思ったけれど。
「……っ」
あっさりと手首を掴まれ、それを制されてしまう。
「殺気、バレバレ」
目の前の彼は、小馬鹿にしたような笑みを浮かべながら私を見つめてきて。
「……っ、離せ!あんたの命、私が奪ってやる!」
「あー、はいはい。それなら今度出直そうな」
「ふざけないで!早く消えてよ!」
「うるっせぇな」
「……んんっ」
喋るなとでも言いたげに眉をひそめたかと思うと、黙らせるように唇を塞いできて。
「……やっ、あ」
強引に口をこじ開けられ、舌を絡めとられる。
逃げようとしても逃げられない。
嫌だというのに体が反応して、その度に彼が楽しそうに笑う。
「今日は楽しませてやるよ」
その余裕な笑みに、言葉にムカついて。
きつく睨み返してやる。
「……っ、残念だけど、私の体はもう汚れてるから。別に今更あんたに抱かれたところで悔しさのひとつもない」
「でも殺したい相手に抱かれて、さらに感じるとなれば相当悔しいだろ?」
腹が立つ、悔しい、気づけば涙が頬を伝う。