危険な愛に侵されて。



突然彼がこちらを向いたかと思うと、体を壁に押し付けられてしまう。

その行動に一瞬ヒヤリとし、命が狙われるのではないかと思っていると彼は強引に私の唇を塞いできた。


「……んっ」


深いキス。

何ひとつ前触れなどなかったため、準備できなかった私は彼の胸元を押し返すけれど。


まったく敵わない。
その上私の唇を貪るようにキスを繰り返してくる。


こんなやり方ずるいと思っていても、すでに彼のペースのためどうすることもできない。


息継ぎをする余裕すら与えてくれない彼はきっと、ただのキスで終わらせるつもりはないのだろう。



ダメだ、息がもたない。

さらには彼の技術がすごく、キスがうまくて。
正直今までのどの男よりもうまいかもしれない。


手慣れている、まるで女のすべてを知っているようだ。



きっと関係を持つ上で、私が苦手とするタイプだとすぐにわかった。

最初から女の動きを封じ、なし崩しにする。
優勢に持っていけない。


裏を返せば、相性のいい相手───


何者なんだ彼は。
このままでは復讐すらままならない。

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