桜の花が散る頃に
「…は?」

夏実の言葉に、会話を聞かれたことを悟った国見達は、凄い形相で夏実とその後ろにいた俺を睨みつける。

「ストリップとは、ストリップショーの略であり、女性が踊りながら着衣を脱いでいくという扇情的な演芸、大衆の性的娯楽の事。そんな知識も知らず、聞きかじった“ストリップ”という言葉を使う低脳なあなた方に悲報!裸の写真を無理矢理撮る事は暴行罪、その写真で人様を脅す行為は、脅迫罪・恐喝罪に当たります!でもまだこれだけで良かったですねえ、もしネットにその写真をアップしてようものならリベンジポルノ防止法違反も追加されて懲役三年でしたよ?でも、あなた方は知識が無いから刑務所に入らなくて良かったんです!なんてラッキー!まあでも、“ゴミクズ”には変わりないよね!アハハ」

…知識めっちゃあるけど煽り方下手くそ!!!
馬鹿な俺にはぜんっぜん理解出来ないわ。

8割以上知らない単語や。

しかし国見達は辛うじて分かるらしく、その長文と内容に唖然としていた。

「…ちなみにあんた達のやり取り、全部録画してたけど…その“ストリップ画像”と この動画、どっちがより燃えるか炎上対決でもする?」

いつもと違う夏実の声色に、俺は鳥肌が止まらない。
青ざめて声も出ない国見達に、夏実は最後の追い討ちをかける。

「自分の人生賭けらんない癖に人様の人生握ろうとしてんじゃねーよ。あんた達みたいのを“イキリ”って言うの。人生オシャカにしたくないなら画像消してその子に謝れ、そんで二度と近付くな。変な気でも起こしてみろ、あんた達をこの国にいられなくさせてやるよ。」

夏実の今にも人を殺しそうなその冷血な目に、国見達三人は逃げるように校舎に入っていった。

俺の目には、夏実はやっぱりかっこよく見えたけど、どこか物凄い闇を感じたのもまた事実。

夏実がこちらを振り返った時には、いつもの太陽みたいな笑顔に戻っていた。

「さて。意気地無しの秋人君、彼女達が散らかしたゴミ片すの手伝って?」

「ふぁ、い!」

それがまた少し恐ろしくて、物凄いスピードで溢れたゴミを拾っていると、隠れていた結城が恐る恐る出てきた。

てか、すっかり結城がいる事忘れてたわ。

「なんであんな事言ったの!?」

てっきり夏実にお礼でも言うのかと思ったら、結城は怯えた様子で夏実に大声でキレる。

夏実はキョトン顔でゴミ拾いの手を止める。

「あんな事言って、あいつらが本当に画像アップしたらどうしてくれんの!?あいつらがこの事根に持って私に今より酷い事してきたらどうしてくれんの!?」

さっきまでのぶりっ子ユキちゃんの面影はゼロ。
夏実は、相変わらずのキョトン顔で返した。

「そんなの、私達と一緒にいればいいじゃん。」

思わず俺と結城は、「は?」とハモった。
前々から思ってたけど、夏実にとって俺や学と仲良くするのは別に特別なことでは無いらしい。

夏実の思考に当てはまる言葉は、
“友達100人できるかな”。

「え?結城さんは秋人の事は信頼してるみたいだし、別に友達になるくらい良くない?駄目?仲良くなるとか信頼云々はこれからでいいじゃん。」


これだから俺は、夏実から目が離せない。


「別に秋人もそれでいいよね?」

「おーおー勝手にしてくだせえ。」

俺の返答に満足したのか、夏実はニッコニコの笑顔。

「…あなた、太陽みたいな人ね。」

結城が、そう夏実に言った。
全く同感だ。

夏実は、底抜けの明るさでその目に映る全てを正しく照らす。

「人生は楽しまなきゃ損なんだからね!」


俺達はいつだって、

太陽に導かれているのだ。



[結城祥子と夏実]end
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