クールな弁護士の一途な熱情
「けど心配いらなかったみたいだね。あんなに見事なビンタ食らわせてたし」
「み、見てたの!?」
「うん。ばっちり」
あんなところを見られていたなんて……!
恥ずかしさに、ハンカチで顔を隠す。
そんな私を見て静はおかしそうに、「あははっ」と大きく笑った。
「せっかくだし、ごはんでもどう?」
「……静のおごりなら」
「かわいい子にご馳走できるなら喜んで」
またそんな、茶化すような言い方をして……。
そうやって、他の女性にも調子いいことを言ってるのだろうか。思わず呆れてしまいながらも、静と並んで歩き出す。
「なにか食べたいものある?」
「ううん。静に任せる」
「よし、任された」
静はそう言うと、自然と私の手を取って歩き出す。
優しく手を包む、その長い指が頼もしく、安心する。
暑い日差しに照らされる駅前の大きな通りを歩きながら、静は口を開いた。
「で、あの人と話はできた?」
「うん。……会社に戻るって、伝えた」
「そっか」
ぼそ、と呟いた結論に、静はすんなりと頷く。
目の前の信号が赤に変わり、横断歩道手前でふたりは足を止めた。
「ごめん、せっかくバイトも慣れてきたのに」
「ううん、元々短期って話だったし。入江には入江の生活があるし」
そう。そもそも最初からそういう約束だった。
私が会社に戻るまで。
私が彼の近くにいる時間は、永遠じゃない。
その前提で働いていたのだから、彼がそれをすんなり受け止めるのも当然。
だけど、引き留めることもなく頷く横顔が、さみしい。