クールな弁護士の一途な熱情
「だから、どうでもいい?」
思わずこぼれた、本音。
人混みの中でかき消されてしまいそうな細い声も、静はきちんと拾ってくれて、首を横に振った。
「違うよ。入江の好きに生きてほしいだけ」
「私の、好きに……?」
それって、どういう意味?
「そりゃあ俺は入江がうちにいてくれたら嬉しいけどさ。どんなにつらくても捨てられないくらい、その仕事が好きで、真摯に取り組んできたんだろうってわかるからさ」
静はそう言って、あいていた左手で私の頭をくしゃっと撫でる。
「入江がやりたいことをやって、笑っててくれるのが一番。言ったでしょ、入江の笑顔が好きなんだって」
私の、笑顔が……。
彼が引きとめないのは、どうでもいいとかじゃなくて私のため。
私が笑顔でいるため。
……本当に、優しい人。
いつでも私のことばかり優先して、考えてくれる。
その優しさとぬくもりに、胸がどき、とときめいた。
鼓動を伝えるように、彼の手を握る手にぎゅっと力を込める。
それを握り返して、静は笑顔のまま。
「それに、都内に戻ってもこの距離なんだしまたいつでも会えるよ」
「また、いつでも……」
そっか。これまでとは、少し違う。
こうして再び縁ができたことで、互いに会おうと思えばまたいつでも会うことができる。
高校の同級生、元恋人、そんな呼び名での関係でしかないとしても。
約束ができることが、嬉しい。