クールな弁護士の一途な熱情



建物にはいくつもの企業が入っているらしく、昨日は静かだったエントランスを今日はたくさんの人が歩いている。

その中をすり抜けるように歩いてエレベーターに乗ると、5階で降りた。



目の前にあるのは、『伊勢崎法律相談所』の文字。



……夢じゃ、ないよね。

改めてこうして見ても夢か現実か疑ってしまう。



だってあの静と再会して、しかも雇われることになるなんて……。

いや、まぁこうしてまたつながるようになったからといって、今更なにかあるわけでもないけどさ。



「あら、果穂ちゃん?早いわね」



その声に振り向くと、そこにいたのはメガネをかけた黒いロングヘアの女性……そう、昨日服を用意してくれた花村さんだ。



「花村さん。おはようございます」

「おはよう」



今日は明るいベージュのノーカラージャケットを着た彼女は、胸下まである髪を揺らしながら事務所へ入る。

それについていくように、私も部屋の中へ入って行った。



昨日少し聞いたところによると、花村好恵さんという彼女は、私より5歳年上でこの事務所のパラリーガル――弁護士補佐役だそう。

7歳の子供がひとりおり、自営業のご主人が主に家を守ってくれているのだという。



美人でスタイルもよく落ち着いていて、それでいてパラリーガルだなんて。かっこよすぎる。

5つしか変わらないのに、と自分との差を感じて悲しくなるほどに。



その眩しさに目を細めていると、花村さんは奥にある部屋へ通してくれた。

そこは壁際に棚が並び、デスクが3つコの字型に置かれている。おそらく事務室だろう。


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