クールな弁護士の一途な熱情
「ここが事務室で、主に私たちや果穂ちゃんが仕事するところね。伊勢崎先生は普段は隣の所長室」
所長室……って、昨日静に通された部屋だ。
彼の性格から、みんなとわいわい仕事をするタイプのように思えていたけれど、実際はそうでもないようだ。
「果穂ちゃんのデスクはそこだから。荷物置いちゃって」
花村さんが目で示す先には、パソコンやバインダー、ファイルや書類が雑に置かれたデスクがある。
これだけ事務仕事が溜まってるということだろうか。大変そう……。
椅子にバッグを置きながら苦笑いをこぼすと、続いて背後のドアがガチャリと開いた。
「おはよー、ってあれ。誰?」
その声に振り向くと、そこにいたのは黒いスーツに身を包んだ、すらりとした長身の女性。
花村さんと同じくらいの年齢だろうか。茶色い髪を綺麗に巻いた彼女は、少しきつめの目をこちらに向けた。
「おはよう、都子。こちら伊勢崎先生の紹介で今日から働くことになった事務員さんよ」
花村さんに紹介され、私は深々と頭を下げる。
「入江果穂と申します、よろしくお願いします」
「そうだったの。私は壇都子、ここの弁護士よ」
彼女……壇さんがそうにこりと笑うと、厚めの唇に塗ったグロスがつやめいた。
壇さんも、静と同じく弁護士なんだ。
それにしても、清楚系な花村さんと派手系な壇さん。系統は違えどどちらも綺麗でスタイルもよく、大人の女の色気がある。
もしかして静って、美人系が好み?
まるでモデルのようなふたりの華やかなオーラに押されていると、壇さんは私のデスクの左向かいにある席にバッグを置きながら口を開く。