クールな弁護士の一途な熱情
「入江さん、挨拶は?」
「あ……おはよう」
『入江さん』、なんて他人行儀な呼び方をする彼に催促されて言う。
けれど彼は笑顔のまま、なにか言いたげだ。
「ここでの俺ときみの関係は?」
「え?関係……弁護士と、事務員?」
「正解。ということは?」
誘導されるようにたどり着いた答えは、つまり、花村さん同様に敬語を使い『先生』呼びをしろということ。
「………おはようございます。伊勢崎、先生」
「よくできました」
渋々ながら言った言葉に、静は満足げにふっと笑って私の頭をポンと軽く叩いた。
む、ムカつく……。
けど確かに、ここでの静と私は弁護士先生と事務員のバイト。
同級生とはいえ花村さんや壇さんたちの目もあるし、その関係を忘れるな、と線引きされたように感じた。
……変に私情が入ってもお互いやりづらいから、それはそれでいいけどさ。
そう心の中でつぶやいていると、静は私のデスクに書類をパサッと置きながら花村さんを見る。
「花村さん、早速入江さんに仕事教えてあげて」
「はい、わかりました」
小さく頷く彼女の横で、壇さんは口を挟むように言う。
「事務の仕事なら私が教えてあげようか?」
「壇さんは余計な話が多すぎるからなぁ」
「コミュニケーションよ、コミュニケーション!」
口を尖らせ言う壇さんに、静は「どうだかなぁ」と苦笑いをする。
そんなふたりを見ながら、花村さんは私を廊下へ連れ出した。