クールな弁護士の一途な熱情
「三人とも仲良しですね」
「えぇ。所長とはいえ私と都子のほうが伊勢崎先生より年上だから。つい上下関係がなくなっちゃうのよね」
花村さんたちからすれば静は年下上司。けど人懐こい静の性格に、ふたりは弟のような感覚で接しているのだと思う。
所長という立場でも偉ぶったりしないところがまた、静らしいと思った。
話しながら、花村さんは事務所内をひと通り案内する。
入り口からお手洗い、給湯室と広いフロア内をひとつひとつ見ていく。
「相談室……は昨日着替えに使った部屋だからわかるわよね」
「はい」
頷きながらも一応見ると、昨日使った個室の相談室がふたつ、そしてその向かいにはやや広めの会議室がある。
部屋数は多くないけれどひと部屋ひと部屋にたっぷりとスペースを使っていて、フロア全体が明るくゆとりのある作りだ。
「この事務所は3人だけなんですか?」
なにげなく浮かんだ問いを口に出すと、花村さんは笑顔で答えてくれる。
「えぇ。伊勢崎先生の方針で、今はまだ少ない人数でひとつひとつの案件に丁寧に取り組んで実績を積む時期だ、って」
「実績を積む時期……」
「伊勢崎先生も独立してまだ2年だから、今が依頼人との関係性を築く頑張りどころなのよね。その甲斐あってだいぶ軌道には乗ってきたけど」
そうだったんだ……。
確かに、まだ2年目と年数が浅い事務所で、静自身も若い。となるとまず依頼人からの支持や信頼、実績を得ることが大切なのだろう。
独立って大変なんだなぁ。
「って、同級生ならこういう話も伊勢崎先生から聞いてるわよね」
花村さんの言葉に、私は首を横に振る。