【完】俺の隣にいてほしい。
こんなところで再会するとは思わなかったから、かなり嬉しかった。


思わずテンションが上がる。


だけど、急に話しかけることなんて、できるわけがない。向こうは俺のことなんてたぶん覚えてないだろうし、俺はあの時とは髪型も髪色も変わってる。


お互い名前も知らないし、話したことすらない。


仮に声をかけることができたとしても、見知らぬ男にナンパされたくらいにしか思われないだろうし、相手は花園のお嬢様だ。警戒されるに決まってる。


結局その日は何もできず、同じ駅で降りたあと、そのまま姿を見失ってしまった。


ただ、そこで一つ発見したことがあった。


俺が朝一本早い電車に乗れば、彼女に会えるということだ。


だから俺はその翌日から、いつも一緒に登校する友達を誘って、なるべく一本早い電車に乗って学校に行くことにした。


早起きが苦手な俺の仲間はみんなブーブー文句を言ってたから、さすがに毎日というわけにはいかなかったけど。


電車に乗ると、彼女の姿があって、俺はただ会えるだけで嬉しかった。


彼女は俺の存在なんて、意識すらしてなかったと思うけど。


そんなふうに名前も知らないまま、見てるだけの日々が過ぎていって。


俺の中で、どんどん彼女のことを知りたい気持ちが膨らんでいった。


でもやっぱり、そう簡単に声をかけることなんてできない。


不審に思われても困るし、男子高育ちの俺と、お嬢様女子高育ちの彼女じゃ、住む世界が違うような気がしてたから。


話しかけるキッカケを、ずっと探してた。



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