桜咲く、その日まで。
由輝side

暇だ……………………………………
でも、仕方ないか。

そう思って、僕は持っていた本に再び視線を
戻した。
それでも、再び視線を外した。こんなに読み
込んだ本は無い。一年くらいこの本を読んだ。
内容なんて、ほとんど暗記している。

カタカタッ、と小さく可愛らしくなった窓の方を
見た。
外は雪が降っていて、暖房がいい感じに効いて
いるこの病室とは全く別世界のようだ。

ズキッ、と頭が痛くなった気がしたのを無視
して、ベッドに寝転ぶ。
この天井も、病室も、窓からの景色も、全部
見慣れてしまった。

ふと思い出し、テーブルにある日記を書き始めた。

僕は村沢由輝。本当なら普通の青春を送る中学
二年生だ。でも、三年前に脳腫瘍を患ってからは、ほとんど学校に行ってない。
中二になってからは特にだ。だから、見舞いに
来てくれるような友達なんていない。
家族だって、凄く忙しいから、見舞いに来る
のは、一週間に一回程度。
今日も誰も来ない。看護師の人の検診は午後6時
だからあと六時間もある。

そう書いた僕は、

「誰か、来ないかなあ。」

と呟いた。

その時、扉が勢いよく開いた。
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