寂しさは他で埋めるから
2本目が終わり、シャワールームから待機室へと戻ると、遅番のノエルが出勤していた。
人懐っこい笑顔を浮かべて両手をブンブンと振ってくれる彼女に、私も両手を振り返す。

お隣りいいですか? と聞きながらソファに並んで腰を下ろすと、ノエルはすぐに私の肩に靠れてきた。

「今日、ボーイ誰がいるの?」
こそっと耳元で訊ねられ、私もひそめた声で「我妻さんいるよ」と答えた。
うわ、最悪……。
ノエルは小声で言いながらコスチュームの腰紐をちまちまと不器用に結び直している。

「守屋クン来てないの?」
ノエルが少し大きめの声で言うと、待機室の扉が開いて2本目を終えたいのりが入って来た。

「守屋、なんか前髪が割れてるから遅れるってさ。朝日が言ってた」
いのりが自分の前髪を真ん中で割って見せながら言うと、「うわ、知らねえ」とノエルが手を叩いて笑う。

「店長もいないし、今日は朝日が回すみたいだよ。だから2人ともその顔やめろって」

顔をしかめている私とノエルの額を軽く指で弾いて、いのりが喝を入れる。

いやだよおとベソベソ文句を垂れながら、私たちはホワイトボードに書き足された今日の予約を再度確認する。

2本目に行っている間に新しく予約が入っていたらしい。

まりあの欄に「本指名!祝!」と意外と丁寧な字で書かれていた。

うそぉ……、と漏れた声が喜びなのかゲンナリなのか自分でもちょっとよく分からなかった。

LINEを確認すると「朝日」から3件メッセージが入っていた。

「本指名入ったぞ!」「がんばれまりあ!」、とスタンプ。

「朝日も最近丸くなってきたと思うよ。まりあにはめちゃくちゃ気ィ遣ってるし」

いのりのフォローに「うーん」と曖昧な返事をしながら、それでも私は頭を抱えてしまっていた。
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