寂しさは他で埋めるから
「ランカーじゃなかったって言ったって、本指名いたんでしょう普通に」
各々一服を終えると、私たちは歯を磨いてイソジンでうがいをして、マウスウォッシュでこれでもかというほど口を漱いで煙草の匂いを消す。
かわるばんこにシャワーを浴びて店のコスチュームに着替えると、待機室の隅に並んで腰をおろした。
先程シャワーを浴びたから、2人ともお揃いのボディソープの匂いが香った。
「前のお店はいたけれどさ。私、今のお店まだ本指とってないんだよね」
私が言うと、いのりは「え、マジ?」と少し大袈裟めに驚いた。
「何回出勤してるんだっけ、あんた」
「回数はもう忘れたけれど新人期間はとっくに終わってるよ」
信じらんねえと彼女は眼を見開いてから、「まあ、でも、そっか」と納得するように独り言をつぶやいた。
あんたかけ持ちだもんねえと呆れ半分に言われ、「そうそう」と私は大きく頷いた。
「新人期間中に昼職の繁忙期が来るとかマジで終わってたよね」
「そこ見越して入店しなかった私が全面的に悪いんだけどさあ」
スマホには昼職と夜職の両方のシフトが入力されたカレンダーアプリが入っている。
夜職を脱却すべく始めた昼職は思いのほかしんどいことも多くて、それと夜職が居心地いいということもあって、結局半々くらいの割合でシフトに入ることになっている。
それでも昼職が優先だから、欠員が出たらこちらを休んでお昼の仕事に入っているし、繁忙期は一切夜に入っていなかった。
「今週のシフト出してないのって、あんたくらいでしょ。朝日が今朝ぼやいてたよ」
先程待機室に通される時、事務所に挨拶はしたのだけれど。
その時知っている人が不在だったものだからシフトについて話せずじまいだった。
LINEを開くと「朝日」からメッセージが来ている。
「おーい」「来週のシフト」「はよ出せ」、のあとにスタンプ。
人懐っこいこの絡みが正直あまり好きになれない。
スケジュールをスクショでもとって送ろうかとスマホで別窓を開いている間に、待機室のドアが開いた。
「まりあ!いのり!おはよう!」
ひときわ大きな声が部屋に響いて、思わず顔を顰めそうになる。
送信ボタンから手を離して顔を上げると、まっすぐに目が合ってしまった。
「まりあー! 久しぶりだなあ、おい!」
ズズイと入って来たスーツの男性は私の目の前に座り込むと、顔を思いきり覗き込んでくる。
その距離だと化粧の粗さがバレるからやめてくれと顔を逸らそうとする間もなく「あ、ニキビ発見」とデリカシーなく指摘をされる。
「最近寝れてる? 野菜食べてる? ご飯食べてる? てか生きてた?」
矢継ぎ早の質問はどれも答えを求めているわけではないと知っている。
黙ったままで私はいのりに視線を送る。
「まりあちゃんいじめるのやめなよ。来なくなっちゃうよ、この子」
いのりが男性の肩を強めにバシッと叩くと、彼も彼で「痛ぁ!」と嬉しそうにリアクションをとって、それから立ち上がった。
ようやく視線が外れて安堵の溜息がもれかけた。
各々一服を終えると、私たちは歯を磨いてイソジンでうがいをして、マウスウォッシュでこれでもかというほど口を漱いで煙草の匂いを消す。
かわるばんこにシャワーを浴びて店のコスチュームに着替えると、待機室の隅に並んで腰をおろした。
先程シャワーを浴びたから、2人ともお揃いのボディソープの匂いが香った。
「前のお店はいたけれどさ。私、今のお店まだ本指とってないんだよね」
私が言うと、いのりは「え、マジ?」と少し大袈裟めに驚いた。
「何回出勤してるんだっけ、あんた」
「回数はもう忘れたけれど新人期間はとっくに終わってるよ」
信じらんねえと彼女は眼を見開いてから、「まあ、でも、そっか」と納得するように独り言をつぶやいた。
あんたかけ持ちだもんねえと呆れ半分に言われ、「そうそう」と私は大きく頷いた。
「新人期間中に昼職の繁忙期が来るとかマジで終わってたよね」
「そこ見越して入店しなかった私が全面的に悪いんだけどさあ」
スマホには昼職と夜職の両方のシフトが入力されたカレンダーアプリが入っている。
夜職を脱却すべく始めた昼職は思いのほかしんどいことも多くて、それと夜職が居心地いいということもあって、結局半々くらいの割合でシフトに入ることになっている。
それでも昼職が優先だから、欠員が出たらこちらを休んでお昼の仕事に入っているし、繁忙期は一切夜に入っていなかった。
「今週のシフト出してないのって、あんたくらいでしょ。朝日が今朝ぼやいてたよ」
先程待機室に通される時、事務所に挨拶はしたのだけれど。
その時知っている人が不在だったものだからシフトについて話せずじまいだった。
LINEを開くと「朝日」からメッセージが来ている。
「おーい」「来週のシフト」「はよ出せ」、のあとにスタンプ。
人懐っこいこの絡みが正直あまり好きになれない。
スケジュールをスクショでもとって送ろうかとスマホで別窓を開いている間に、待機室のドアが開いた。
「まりあ!いのり!おはよう!」
ひときわ大きな声が部屋に響いて、思わず顔を顰めそうになる。
送信ボタンから手を離して顔を上げると、まっすぐに目が合ってしまった。
「まりあー! 久しぶりだなあ、おい!」
ズズイと入って来たスーツの男性は私の目の前に座り込むと、顔を思いきり覗き込んでくる。
その距離だと化粧の粗さがバレるからやめてくれと顔を逸らそうとする間もなく「あ、ニキビ発見」とデリカシーなく指摘をされる。
「最近寝れてる? 野菜食べてる? ご飯食べてる? てか生きてた?」
矢継ぎ早の質問はどれも答えを求めているわけではないと知っている。
黙ったままで私はいのりに視線を送る。
「まりあちゃんいじめるのやめなよ。来なくなっちゃうよ、この子」
いのりが男性の肩を強めにバシッと叩くと、彼も彼で「痛ぁ!」と嬉しそうにリアクションをとって、それから立ち上がった。
ようやく視線が外れて安堵の溜息がもれかけた。