紳士に心を奪われて
ベッドの上で眠る果歩に、加瀬は言葉を失う。


「加瀬」


ベッドのそばで立ち尽くしていたら、ドアが開き、地崎に呼ばれた。
加瀬は重い足取りで廊下に出る。


「真壁なんだが、例の殺人犯に襲われたらしい」


自分の耳を疑った。
事件に巻き込まれてはいけないからと、女性はなるべく夜道を歩かないよう言っていたはずだ。
それなのに。


「あのバカ、自分よりもほかの女性が犠牲になることが嫌だったんだろ」
「……ありえません」


加瀬は力いっぱい、拳を握る。


「あの人は、いつも無気力で……そんな自分の身を危険に晒すような人には……!」


地崎は加瀬の頭に拳を置く。
加瀬はどう反応すればいいのか分からず、固まる。


「そんなんだから未熟者って笑われるんだよ。お前、真壁の何を見てきたんだ。あいつは誰よりも、熱血な奴だよ」


信じられなかった。
嘘だとしか思えなかった。


「真壁はさ。毎晩、穴が空くほど事件があった日の近場の防犯カメラの映像を見てる。何かヒントがあるんじゃないかって」


果歩の徹夜の理由を知り、地崎の言うことが本当なのではないかと思い始めた。
それでも、加瀬は鵜呑みに出来なかった。


「署に泊まり込んでいたあいつがこうして襲われた。……どういう意味か分かるな?」
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