紳士に心を奪われて
地崎は加瀬の頭の上に置いていた手を下ろす。
それに合わせるように、加瀬は顔を上げた。
その表情は凛々しかった。


「ヒントを、見つけた」


加瀬の答えに、地崎は口角を上げる。


「そういうことだ」





署に戻って、果歩が見ていた映像を繰り返し見た。
だが、何度見ても果歩が何を見つけたのか、分からなかった。


日が暮れる時間までほかの仕事をこなしながら、映像を見ていたが、退社時間になって、加瀬は一度休憩した。
果歩の病室まで足を運ぶ。


ドアを開け、加瀬は固まる。


「……おいおいおい。嘘だろ?どこ行ったんだよ!」


ベッドはもぬけの殻だった。
出歩いているのかとも思ったが、注射を抜いている。


加瀬は慌てて看護師に伝えた。
加瀬も果歩を探すが、院内に果歩の姿はなかった。





壁を頼りに、体を引きずりながら歩いていた。
腹部の痛みに耐えながら、自宅を目指す。


家に着くと、まず水を喉に通した。


それからクローゼットに向かう。
昨日とは別人に見えるような服装、見た目にする。


時間を見計らって、家を出る。


人も少なく、薄暗い、昨日と似たような場所をゆっくりと歩く。
まだ無理をしてはいけない状態の果歩は、額に汗を浮かべていた。
顔色だって悪い。
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