紳士に心を奪われて
男は気絶し、それを見た途端、緊張の糸が切れたかのように、果歩は座り込んだ。
だが、最後の力を振り絞って加瀬に連絡した。





果歩が目を覚ましたのはそれから二日後のことだった。
精密検査を受け終えたころに、加瀬が到着した。


「先輩!」
「うるさい、ひよっこ。ここは病院で、私は病人なの。わかる?」


そこには加瀬の知っている果歩がいた。
悪態は嬉しくないが、その対応にどこか安心した。


加瀬はベッドの横にある丸椅子に座る。


「先輩のおかげで犯人を捕まえることが出来ました。でも、今後一切、こんな無茶しないでください」
「無茶なんかしてない。私はただ、刑事としてできることをしただけ」


果歩が開き直っているようには見えなかった。
本当に、熱血な人だということがわかる。


簡単に言えば、レベルが違う。


加瀬は果歩の後輩でよかったと、初めて思った。


「それで、取り調べはどう?」
「包み隠さず話してくれてますよ。男が狙ったのは、自分に惚れたであろう女性のみだそうです」


加瀬は男の話を果歩に話す。


男は最近、妻を失った。
男は仕事ばかりで、子供もいなかったために、妻を一人にすることが多かった。


妻は不幸を感じさせたまま、この世を去ってしまった。
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