紳士に心を奪われて
だが、無茶をしてでも犯人を捕まえなければならないと思った。


角を曲がると、人にぶつかった。
昨日と、同じように。


「お嬢さん、お怪我はありませんか?」


柔らかな声に、果歩は覚悟を決める。


「はい、大丈夫です」


気付かないで。
そう思いながら、演技をする。


「顔色が悪いようですが……」
「今日少し疲れてしまって……でも、あなたのような素敵な方に出会えて、少し癒されました」


相手の言葉に笑顔で答える。


気付くな。
気付くな。
気付くな。


心臓の音が大きくなっていく。


「私なんかがお嬢さんの癒しになれて光栄です。ただ、本当に具合が悪そうですよ?」


演技を続ける。


果歩は小さく笑った。


「今人気のキザなキャラクターみたいですね」
「そんな。私は怪盗ではありません」
「ええ、知ってます。あなたは……」


果歩は相手の右手首を掴み、上げる。


そこには仮面を外した果歩がいる。


「あんたは連続殺人犯だ」


男の手にはナイフが握られている。
男は果歩の手から逃げようとするが、果歩の力は緩まない。


「警察を……」


空いた右手で胸ぐらを掴む。


「舐めるなよ」


そして思いっきり男を投げた。
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