貧乏姫でもいいですか?(+おまけ)
ここは、花菜が普段通る通路ではない。

弘徽殿へと向かう道筋は何通りかあるが、この通路は清涼殿を行き来する公達と会ってしまう危険が多いので使わない通り道なのだ。

でも今日は『こちらから行きましょう』と右近に言われて付いてきた。
更に言えば、こんな風に運ぶのはもっと下級の女官が手伝ってくれるものなのに、右近が自ら申し出たのである。

――こんな風に、偶然の出会いを期待してのことなのかしら?

いつの世にも肉食系女子というのはいるのだと、妙に感心する花菜だった。


その後、弘徽殿では――。

紅い色をした茶を口にした弘徽殿の女御は、香りを楽しむように器を両手で包み込んだ。

柑橘系の爽やかな香りが、花菜のもとまで漂ってくる。
気持ちを落ち着ける、とてもいい香りだ。

女御が口にしているのは、みかんの皮で風味をつけた花菜特製のフレーバーティ。

紅茶を楽しんだことはある女御でも、こんな風に甘酸っぱい香りがする紅茶は初めての経験なのだろう。
うっとりとため息をつく。
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