貧乏姫でもいいですか?(+おまけ)
振り返って、先日はありがとうございましたと言いたいが、この世界ではそんなことはできない。
顔を見られてはいけないのだから。
残念だわ、と後ろ髪を引かれる思いで前に進むと、後ろからカタッと音がして間もなく「どうぞ」と声がした。
そっと振り返ってみると、後ろを歩いていたらしい女官が落とした扇を頭中将が拾って渡しているところだった。
「わざとね」と言いながら、右近が苦々しげに眉をひそめる。
「え? わざと扇を落としたっていうこと?」
「決まってるじゃない。見てあの得意げな顔」
女官は頭中将から見えないように袖で顔を隠しているが、花菜からはよく見える。
なるほど彼女はとってもうれしそうな様子で、頭中将から扇を受け取っていた。
「私だって、これを持ってさえいなければ落とせたのに」
そう言いながら悔しげに唇を噛む右近に、花菜は目を丸くするばかりだが、そういえばと今更のように気づいた。
顔を見られてはいけないのだから。
残念だわ、と後ろ髪を引かれる思いで前に進むと、後ろからカタッと音がして間もなく「どうぞ」と声がした。
そっと振り返ってみると、後ろを歩いていたらしい女官が落とした扇を頭中将が拾って渡しているところだった。
「わざとね」と言いながら、右近が苦々しげに眉をひそめる。
「え? わざと扇を落としたっていうこと?」
「決まってるじゃない。見てあの得意げな顔」
女官は頭中将から見えないように袖で顔を隠しているが、花菜からはよく見える。
なるほど彼女はとってもうれしそうな様子で、頭中将から扇を受け取っていた。
「私だって、これを持ってさえいなければ落とせたのに」
そう言いながら悔しげに唇を噛む右近に、花菜は目を丸くするばかりだが、そういえばと今更のように気づいた。