貧乏姫でもいいですか?(+おまけ)
「梅木(うめき)」
牛車の中からそう呼ばれて、従者は振り返った。
「はい」
車の中にいる貴人にも先程の声が聞こえたのだろう。
物見窓が上に開いた。
闇の中にぼんやりと、公達の美しくも凛々しい目元が現れる。
「今、なにか聞こえなかったか?」
「ええ、藤盛の少将の屋敷のようです」
その名を聞いて知らぬ者はいない。
「あぁ……」
と、ため息にも似た声を吐き、公達はピシャリと窓を閉めた。
藤盛の少将といえば評判の変人だ。
元は風貌も行いも立派な貴族だったらしいが、出世争いに負けたあたりから様子が変になったという。
あれよと言う間にみる影もないほどやせ細り、ついには物の怪に憑りつかれてしまったというもっぱらの噂である。
少将には一人娘の姫がいた。
牛車の中からそう呼ばれて、従者は振り返った。
「はい」
車の中にいる貴人にも先程の声が聞こえたのだろう。
物見窓が上に開いた。
闇の中にぼんやりと、公達の美しくも凛々しい目元が現れる。
「今、なにか聞こえなかったか?」
「ええ、藤盛の少将の屋敷のようです」
その名を聞いて知らぬ者はいない。
「あぁ……」
と、ため息にも似た声を吐き、公達はピシャリと窓を閉めた。
藤盛の少将といえば評判の変人だ。
元は風貌も行いも立派な貴族だったらしいが、出世争いに負けたあたりから様子が変になったという。
あれよと言う間にみる影もないほどやせ細り、ついには物の怪に憑りつかれてしまったというもっぱらの噂である。
少将には一人娘の姫がいた。