貧乏姫でもいいですか?(+おまけ)
年頃の姫のはずだが、狐に化けるとか、物の怪となって夜な夜な京の都を徘徊するという禍々しい話ばかりが耳に届いてくる。

時折、物好きな男が姫に近づこうとするが、ついに事を成し遂げたという話は聞いたことがない。
皆、なにやら恐ろしい目にあって早々に逃げ帰るという。

さらにこの姫、つい最近聞こえてきた噂では、天狗の雷に打たれてしまい、このひと月あまり意識がないという。

今聞こえた声は人の声なのか、はたまた妖怪の声なのか?

気味が悪い声を聞いてしまったと思ったのだろう。従者は先を急いだ。

また風が吹き始めた。

強風に耐えながら、忍びやかに車は進んでゆく。

恋人の家からの帰りだろうか。

夜が明ける前の、ちょうどそんな時刻だった。
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