貧乏姫でもいいですか?(+おまけ)
「まめに手を洗う。咳が出た者は、その時点で無理をさせない。これくらいしかないだろう。体力がものをいう。忙しいからと言って不摂生をさせないことだ」

陰陽師でありながら、祈るとか祓うとか言わないところが、いかにも蒼絃らしい。

「これ以上、流行らないことを願うばかりだな」

そう言って、頭中将は眉をひそめる。

「いずれにしても、女官の追加をするより他にないだろう。とりあえず施薬院の医者に話を聞いて、場合によっては最近評判の薬師がいるという山寺にも行ってみようと思うが」

源李悠は、母は違っても東宮が最も信頼する兄だった。

自由に動けない東宮に代わり、東宮の代弁者として積極的に動いている。
というのも彼は、自由に動くために自ら願い出て臣下の籍に降りたという、特殊な経歴の持ち主だった。

ちなみにその時、その代わり何かあれば必ず皇籍に復帰するという約束をしていた。
というよりも、“させられて”いる。

「数日戻らないかもしれないが、その間頼むぞ」

「わかった」
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